三宅なほみの研究物語 三宅なほみ先生が紡いだ研究のルーツをや関心事を、先生からお聞きし、連載形式で沢山の方にお伝えしていきます。
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三宅なほみの研究物語No.9 東京大学 教育学研究科 博士課程 母親と子どものやりとりの日米比較

――一方で、三宅先生の関心は「ことば」に向いていったのでしょうか?

三宅
ええ。言語の発達は、Piagetが言うような段階的なものではないと思っていましたね。
自分が英語を使う目的を意識したり、実際に英語を使ってみると嬉しいと感じたりする子どものほうが伸びるのではないか、つまり、本人の思い入れや行動が、能力に関係していると考えていたんです。

そう、あるときアメリカから送られてきたビデオを再生して、非常に驚いたことがありました。親子がコミュニケーション・ゲームに取り組んでいる場面だったんですけど、母親が"No, not this ant, that small one."(いいえ、このアリさんじゃなくて、あの小さなのよ)と言うと、3歳児が"Do you mean the small ant who are doing this?"(つまり、こうしている小さなアリさんっていう意味?)とか言うんです。母親の話に、3歳児が合いの手を入れるという。

――意図を確認するとは、一人前ですね。

インタビュ-のイメージ

ええ。研究仲間と一緒に見ていたんですけど、そのビデオを見終わった後、しばらくは沈黙が続いたような気がします。3歳児が達者に話す様子を見て、果たして日本でも同じことを分析していると言えるのか疑問を持ちました。
アメリカ人が付加疑問文で"isn't it?"と言えば、相手の確認を取る意味があるけれど、日本で「ね?」と言ってもこれが確認を取っているかどうかは、わからない。
日米で本当に同じように分析していると言えるか、という話ですね。英語と日本語は違う。

やり取りに際して主語を明確に示し、3歳児が相手に対して"What do you mean?"と尋ねるアメリカの文化と、大学院まで自らの意見を尋ねられたことがない日本の文化。
文化が非常に違う、これは教育にどう関係するのか、と考えていました。

「言語の使い方を通して人の考え方を探る」ということが、ずっと気になっていたのだと思います。

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