2017年5月17日の読売新聞朝刊に、入試関連の白水のコメントが掲載されています。言葉足らずなので,その元コメントを共有させてください:
新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」は「目に見える」学習活動ではなく,そこで育まれる「見えない」子どもの学びを指す。新テストの狙いは,その成果の見とりだ。
今回のモデル問題は斬新には見えないが,数学は図形上の点や三角形の辺の長さ,観測者の位置を「動かせるか」を問うことで,三角関数など数学的な概念の深い理解を見とろうとし,国語は実用的文章を要約し相手に反論できるかなど,生きるための基本的な国語力(文章読解・記述力)を見とろうとしている。
これに対して,類題(点を動かす問題や変数を自分で定める問題)を沢山解かせたり,行政文書,会話文,契約書に触れさせたりする付け焼刃の試験対策ではなく,そもそも問題が何を聞いているのかや,自分たちの知識を活用できないか,多様な解法にどのような利点・共通点があるか,対立する論点の調停や解消に文書のリソースがどう使えるのかを考えるなどの対話型の授業を日々どれだけ積み重ねているかが鍵になる。また,出題者側にも,高校生に解いてもらってそのプロセスを観察したり,高校の先生方の意見を聞いてみたりすることで,不断の問題改善をしていくことを求めたい。例えば,数学の穴埋めがそもそも「解がもう一つあること」のヒントになっていたり,国語の字数制限が短すぎて多様な解答を書きにくくなったりしているなどの問題点が見受けられる。別解に気づくかを見とりたいのであれば,そこを狙って自由記述式にすることや,多様な解答を収集してから適切な文字数を定めること,実用文でなく文学的文章で似た力を問えないかなど,子どもの見えない学びを捉える「窓」の開け方で,もっと試せることはあるはずだ。
白水 始