協調学習(Collaborative Learning)
個人の理解やそのプロセスを他人と協調的に比較、吟味、修正する過程を経て一人ひとりが理解を深化させる学習プロセス。うまく機能した場合、個人単独では到達しにくいレベルの理解に到達できる。(後略)三宅なほみ(2010).V部 関係と状況の中での「学び」5章 協調的な学び 佐伯胖(監修)「学び」の認知科学事典 (pp. 459-478) 大修館書店, p.460
協調学習とは、対話を通じて理解を深める個々人の学びの過程を指す言葉です。授業の手法や学習活動の名前ではなく、子ども自身に起こっている学習そのものを指すのが協調学習という言葉です。
1990年代以降の学習研究の中で、人が理解を深める仕組みとして特に有力視され、研究されてきたのがこの協調学習です。現在の学習指導要領でも、こうした研究を背景に「主体的・対話的で深い学び」として、単にコミュニケーションのための対話ではなく、他者とのやりとりを通じて自身の理解を見直し、より多面的で深い理解を形成するための対話が目指されています。
協調学習は、単にグループで話し合ったり、問題解決をしさえすれば必ず起こるというものではありません。また「知識構成型ジグソー法」のような特定の手法を用いさえすれば、必ず実現するものでもありません。一人ひとりが主体的に答えを作りながら、考えの違う他者との対話を通じて自分の考えを見直し、深めていくような学習過程を教室の中でどう実現していくか。これは学びの場をデザインする教師の大きな(そしてずっと問い続けていくべき)課題です。
また、協調学習は教室の中だけで起こるものではありません。私たち大人も、対話を通じて自分の考えを見直し、深めていけているでしょうか? 子どもだけでなく、「大人の協調学習をどのように支えていくか」も、よりよい社会を実現するために社会全体が取り組むべき大きな課題の一つだと考えます。